2024年9月24日火曜日

中津巡検①山国川の県境(2024年9月)

 久しぶりに巡検をした。

巡検とは学術研究の為のフィールドワークのことで、筆者は自分の趣味を学術研究だと思い込むことで自分を保っているので、この言葉を使う。


中津では以下のものを観察した。特に②なんかは、結構需要があるのではないかと睨んでいる。


①山国川の県境

②中津競馬場跡

③薦神社

④沖代平野の条里制

⑤小祝地区

⑥御境川と吉富町



帰省中の友人を拾った後、中津まで下道で向かった。言うまでもなく大分は豊後国、中津は豊前国である。車で2時間かかった。国が違うのも納得する。



尤も、高速で行けば1時間で着く。下道で山をノロノロ走ったから2時間かかった。

が、高速料金をケチれた以外に良いこともあった。図らずも佐田京石の近くを通り、見学できたことだ。



佐田京石は大分B級観光地の一つである。大きな岩が人為的に並べられている。説明板は、弥生時代のものと思われるが定かではない、と投げやりであった。同行した友人は「生殖器信仰の一種ではないか」という旨をもっと下品に発言していたが、形状からそうも思われない。


実は、石はこの状態で見つかったわけではなく、掘ったらデカい岩が見つかったので、本来あったふうになんとなく「復元」してみたというのが真相らしい。並べ方に古代人の想いを感じ取ったのがバカバカしくなる。

が、人間くらいの岩がゴロゴロ立っているというのは、岩が会議をしているようで面白くはあった。



山道を越え、豊前国に入った。まず向かったのが、山国川の県境である。筆者は熱烈な県境ファンであり、大分県の県境を通る道路を全てまとめている。が、現地に来たのは初めてである。感動もひとしお、というところだ。



初めに、県道16号線・大平橋に来た。県境標識が立っている。実は、この標識は、おそらく僕が立てたものなのだ。


2年前に記事でも紹介したが、僕は県境を通る道路にもかかわらず『大分県』のような県境を示す標識が立っていない箇所をリストアップして県に送り付けたことがある。県道路保全課からは、「ご指摘のとおり行政境を示す標識がない箇所について、順次設置していきます。」と返信を頂いた。


今にして思えば、仕事を増やして申し訳ない思いでいっぱいだ。筆者はあくまで県境オタク県民として投書したが、もしかしたら県に文句をつけたいあまりに標識を全て確認した激ヤバクレーマーと思われたかもしれない。



が、標識が立つのはよいことだ

さらに、橋には県境を意識した県鳥のデザインがあり、県境のポールも備えてあり、かなりマニア的に楽しい場所であることが分かった。



このあたりでは、一級河川・山国川が県境となっている。このことについて少し触れたい。

一般に、県境というものは概ね令制国の国境に準拠するものだ。例えば、大分県と宮崎県の県境、大分県と熊本県の県境は、豊後国の国境にならっている。



が、大分県と福岡県の県境の一部は、国境に従っていない。豊前国を分断するように、新たな境界線が引かれている。これが特色である。

尤も、完全に新たな線というわけではない。国の下の行政区画であるの境界を、県境として採用しているわけである。

なぜ国境を採用しなかったか、つまり、なぜ中津地域が福岡県ではなく大分県に入ることとなったかが問題だが、長くなるのでここでは触れない。



そういうわけで、山国川が県境となっている。

「やまくに」とは実に風雅な名前だと思う。『豊前国風土記』逸文にすでに見えるという。

近くには有名な耶馬溪があるが、今回はスルーする。



ところで、ここは県道16号線である。県道についてふたつ、読者に紹介したいことがある。

まず、100番以下の県道と101番以上の県道は大違いだということである。

100番までの県道は原則として「主要地方道」とされ、101番以上の県道「一般県道」と区別される。

具体的な差異としては、整備・管理費用の50%までを国が補助することができるという点がある。



半分国道のように扱われるわけだから、当然、国道に準ずるように交通量の多い路線が主要地方道として指定されている。

例えば、道路交通センサスによれば、この16号線の県境部分は一日に2647台の通行があるところ、後に見る102号線の県境部分は444台しか一日に通行しない。

101番以上とは大違い、ということである。


尤も、国道の中にもどうしようもなく通行量の少ない「酷道」があるように、主要地方道だからといって必ずしも賑やかな道ではない。例えば、大分県道41号線なんかは林道以下の山道であり、不慣れなドライバーを谷底に叩き込む。また、100番以下でも、大分県道57号線のように「一般県道」と扱われる特異な例もある。

それについてここでは詳しく触れないが、そのようなイレギュラーを愛するのが我々の趣味であると思う。



ふたつ紹介したいことがあると先に書いたが、マジで二つ目を忘れてしまったので、流して次に進みたい。次は車で5分ほど河口方面に進んだ県道102号線である。

ここにも同様に、僕が建立させた標識が立っている。僕が立てたなんて言うのは自意識過剰な話だが、あくまで冗談として言っていることを、一応付記しておく。


先に書いたように、ここは102番、つまり一般県道で、交通量が少ない。一日に444台しか通行しない。一時間に19台の計算である。我々が滞在している数分間で1台が通行しており、そんなものかと思う。

交通量が少ないので、工事車両が大量に橋の上に路駐しており、おおらかさを感じた。実質一車線道路となっていたが、全然さばけている。

標識以外に県境を示すものはなく、ここでも主要地方道と一般県道の差を感じた。



最後に、時系列は前後するが、山国川河口部の大分県で最も北にある県境道路・県道108号線も訪ねた。「一般県道」ながら、街中にあるため交通量は多く、一日に13334台が通行する。

主要地方道かどうかは必ずしも交通量だけで判定されるものではなく、都市間交通としての役割も考慮されるのだと思うが、詳しくはよくわからない。


さきほど二つ目で紹介したかったことを思い出した。県道が県境を跨ぐ場合、それぞれの県で路線の番号がどうなるかご存知だろうか?つまり、大分県道108号線が福岡県に入ったらなんという路線になるのだろうか?

正解は、福岡県道108号線になる。番号が異なる不都合を避けるため、1990年代に宮澤内閣の下で基本的に統一された。まあ、取るに足らない話であった。



山国橋からの景色は心地よかった。山国川は河口間近でふたつに分かれ、県境は左の方を採用している。つまり、あの中洲は大分県の領土である。

あの中洲を小祝という。実は、小祝は福岡県側の地名でもあり、県境が小祝地区を分断している形になるが、それはこの巡検記録で後述する。

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