2022年11月8日火曜日

浦和競馬に行ってきた【後編】

 前編からの続き

 

一応、競馬場の全場制覇は「開催中」に訪れることを(個人的に)要件としているので、前編ではアリバイのために開催中の浦和を訪れた。しかしながら、本番は非開催時にある。後編が本編である。

 

前編から二日後、彼女を「良い散歩コースがある」と言って浦和競馬場に引っ張ってきた。今度は南浦和で降りた。浦和までもう一駅行くと運賃が80円ほど跳ね上がるからだ。

 

非開催中でもバスは走る。この日はWINSとしての営業を行なっていたことでバスが走っていた。平日は大抵南関競馬の場外がやっているのだから、ほとんど毎日走っているのではないか。

 

競馬場に着きひとまずスタンドに出てみると、大きなビジョンにJRAの中継が映され、浦和の寡黙なファンたちが馬券検討に勤しんでいた。

しかし、今回の本質はスタンドではない。ビジョンがある内馬場に用がある。

 

浦和競馬場の施設は、非開催日、つまり一ヶ月のうち25日間ほどは開放され、自由に通り抜けることができる。自由に通り抜けるとはどういうことかというと、コースを歩いて渡ることができるということだ。歩道は2本あり、入り口は全部で4ヶ所ある。

 

まず南浦和駅に近い1角付近から入る。歩く場所にはマットが敷いてあって、深いダートに足を取られないようになっている。歩いて入れるのはこのコースを横断する箇所だけで、コースを周回することは残念ながらできない。とはいえ、ちょっとマットを踏み外すくらいは問題ないだろう。この日はおそらく良馬場で、当然ながら砂場を踏むような感覚であった。

 

コースは幅24m。参考までに、東京競馬場の芝コースは41m、大井競馬場は25mである。コースを横から見る景色は斬新で爽快である。騎手はこういう風にスタンドを見ているのか……と感慨に耽りかけたが、今立っているのは1コーナーなので、騎手はあまりこっち向きには走らないはずである。感慨は向正面にとっておくこととする。

 

ゴール板を横から見ると、案外分厚い。馬は競馬を理解しているのか?ということは誰しも思うことだが、回答としては、理解しているらしい。また、ゴール板を先頭で駆け抜けることが良いということも理解しているようだ。こんなに分厚いなら、走っていても馬の眼にも写るだろう。

 

内馬場は公園になっており、この日は少年野球のチームが紅白戦をしていた。そのグランドの横に、用水路のような川が流れている。藤右衛門川という。一級河川である。周回コースも川に橋をかけたようになっている。

 

地形図で見れば一目瞭然、浦和競馬場は藤右衛門川の河川敷を利用したものとなっている。川は面白い。区画整備された街に生まれた筆者にとって、川は「なぜかそこにあるもの」であった。子供の頃は、洪水のニュースを聞くたびに「川をなくせば良いのに」と思ったものだ。

あるとき、川の水は雨水であり、雨水が標高の低いところを選んで海に流れているということに気付いた。川の本質は水ではなく、低い土地なのだ、と。

そういうわけで、浦和競馬場と藤右衛門川も長い付き合いである。

 

2角、向正面に出た。これこそ、騎手が見ている景色である。尤も、もう少し高い目線だろうが。

浦和競馬場は小さい。ゆえに向正面の幅は僅かに16.5メートル、フルゲートは最大12頭となっている。こういう条件が、他の南関競馬と比べた浦和競馬の弱点である。


案外、一般の人の通行が多い。となると、周辺住民は浦和競馬をそこそこ嫌っているに違いない。悪臭はするし、「普段使っている」歩道がたまに競馬開催で通れなくなるからだ。


続いて3角。浦和は直線が短いため、ここら辺の位置どりが非常に重要になる。重要すぎて、騎手が殉職する落馬事故も起こっている。

さらに、奥のポケットの部分が悪名高い1600mのスタート地点である。コーナーの途中からスタートするわけで、直線部分がほとんどない。そのため距離ロスが非常に激しく、顕著な内枠有利のコースとなっている。中央騎手が「日本一難しい」と評するスタート地点だと、浦和競馬場の公式ホームページにはある。

 

最後に第4コーナーからスタンドを眺める。馬場内には中央競馬でも開催最終日に入れたりするが、やはり皆入りたいので非常に混んでいる。それに比べて、浦和競馬場では入れる日の方が入れない日より圧倒的に多い。

 

スタンドと逆側には1500mのスタート地点がある。南関三歳牝馬クラシックの初戦・桜花賞は以前は浦和1600mで行われてきたが、先述の通り浦和のマイルは問題が多いため、最近では1500mで施行するようになっている。1600m戦はもうほとんど行われていない。

 

競馬場の北側には藤右衛門川通りという道があり、この地下には川が通っている、いわゆる暗渠である。川は密かに街を流れている。

 

以上、浦和競馬場探検でした。

おまけ:地図



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