2022年10月27日木曜日

グランクラスをしゃぶり尽くす【前編】(東京駅ラウンジ)

202210月は鉄道開業から150周年ということで、JR東日本管内で新幹線まで含めて乗降自由という偉大なフリーきっぷ「鉄道開業150年記念 JR東日本パス」が発売された。

連続する三日間の切符だが、筆者は授業や卒論が忙しく二日間しか利用できそうにない。が、150周年パスの旅行ブームに乗らないのもまた癪である。そういうわけで、二日間で東北に行くことにした。新潟には競馬を見に行ったし、金沢にも競馬を見に行ったから、他に行くアテは東北方面のみだったからである。

 

しかしながら、困ったことがあった。旅程にはどうしても日曜日を含んでしまうが、この東日本パスの影響で、休日の新幹線が鉄道オタク満載激混み奴隷船と化しているということだ。指定席はパンパンで、知らんオタクと2時間半近く隣に座るのは、筆者としては辛いものがある。再三書いているが、筆者は混雑が大嫌いなのだった。

 

では、グランクラスに乗ってはどうだろうか?と閃いてしまったのだった。

グランクラスに乗ったことは無いから、大分に戻る前に一度乗ってみたい。また、グランクラスのサービスは縮小傾向らしく、いつまでアテンドサービスが残っているか分からない。混雑する指定席を避けられるという点でも、グランクラスに乗るメリットはかなり大きいのではないか。

このように自分を説得しなければならないのは、フリーパスのやや複雑な料金設定が理由である。

普通、グランクラスに乗るには「乗車券運賃」+「新幹線特急料金」+「グランクラス料金」の三階建ての料金が必要となる。

フリーパスは新幹線に乗り放題なので「乗車券運賃」と「新幹線特急料金」が無料になる。しかし、グランクラスに乗る際にはフリーパスは「乗車券運賃」のみ無料となり、「新幹線特急料金」は払う必要が生じる。

つまり、指定席に押し込められれば無料の「新幹線特急料金」を、グランクラスに乗った場合は払わなければならないのである。これは無駄のように思える。

 

しかし、である。今後大分に住む自分が東北新幹線を長距離で乗る機会なんて、はたしてあるだろうか?乗車券代がタダなだけでも充分美味しいのではないか?

こういう逡巡を経て、思い切って乗ることにした。金ねえのに。

そして、グランクラスをしゃぶり尽くすことを決意したのだった。

 

東京―盛岡間の三階建て料金はそれぞれ、

乗車券運賃:8580

新幹線特急料金:5900円(はやぶさ)

グランクラス料金:10640円(はやぶさ)

であった。グランクラス料金に加え、本来は払わなくても良い5900円の特急料金を払い、優雅な旅に出ることとなった。

 

東京駅には745分くらいに着いた。大宮の方が近いのだが、東京駅から乗らねばならない理由があった。それは、東京駅のラウンジを利用できる特権を行使する使命である。東京駅の八重洲中央口にあるビューゴールドラウンジは、グランクラス利用者か、ビューゴールドカードを持ち当日にグリーン車以上に乗る人でなければ入れない、優雅な空間がある。ここをしゃぶり尽くさないと旅は始まらない。

やや早めに着いたのは、NewDaysでご飯の調達をしようと思ったからだ。めざとい筆者は、NewDaysで東日本パスを提示すると10%オフになることを知っていた。せっかくのグランクラスで食べるものなので、ちょっといい物を買いたい。10%オフなら、そんな欲望にも積極的になれるわけだ。有名な「峠の釜飯」のおにぎりなどを買い、452円。通常なら破産確定だが、1割引が効いて406円となり、ギリギリ生存できそうである。

八重洲までの道のりに大いに戸惑いつつ、ビューゴールドラウンジを発見したのが8時ちょうど頃である。ラウンジには列車発車時刻の90分前から入れることになっており、筆者の乗るはやぶさ13号は936分の発車、90分前は86分である。すなわち、5分ほど待つ必要がある。多分受付に行けば入れてくれると思うのだが、筆者はこういう点で「気にしい」である。外を散歩し、時間を潰した。

 

ラウンジは外からはこのように見える。白いカーテンに遮られ、中は見えない。このカーテンは「丸の内の先進性」を表しているらしいが、よく分からない。

 

ようやく6分になったので、意気揚々とラウンジに向かう。時間ちょうどに行くのもなかなか恥ずかしいものではあるが、ラウンジの時間まで待つ行為が既に恥ずかしいものであり、筆者の人生は常に生き恥を晒しているようなものなので、気にせず入る。

 

8時に開いたばかりだからか、中には数名しかいなかった。この日は東日本パスの効果もあってか新幹線は超満員で、筆者の乗るはやぶさも全席予約済みであったので「ラウンジも混雑しているかも」と思っていたが、杞憂に終わったようだ。

二人席に案内してもらい、優雅に時間を過ごす……予定であったが、如何せん落ち着いた空間に慣れていないので「困惑しながら時間が流れる」といった方が正しい様態であった。情けないことである。

 

緑茶をもらい、仕事をしている感じを出しながらこの文章を書いている。最近は旅行中にすぐにブログ記事を書くことが多くなった。移動時間が充実するし、家に「宿題」が残らない。筆者の敬愛する沢木耕太郎氏は、その旅行から10年経って「深夜特急」を書いたという。自分の中に出会った事象を沈潜させる時間が必要ということだろう、若い筆者はそう思いそのスタイルを踏襲してきたが、寝かせるだけ寝かせて書くのが面倒くさくなって書かないことが多かった。どうしようもない人間である。そういうわけで、最近はすぐに書くこととしている。

 

「ゴールドラウンジ」「グランクラス」というくらいだからちょっとしたドレスコードなどもあるかと思ったが、全然そんなことはなく、普段着の人もいた。普段着どころか、全身ピンクのマイメロおじさんでもラウンジに入れていたので、ドレスコードは皆無と言って良いだろう。無駄な緊張感が走ってしまうので、できれば彼は弾いて欲しかったものだが。

 

まだ社会人でないので社会人の金銭感覚は分からないが、下手にグリーン車に乗るくらいなら、グリーン料金からさらに5000円ばかし追加してグランクラスに乗った方がコストパフォーマンスは高いのではないだろうか。

そう思ったが、実際のところこの話はかなり条件付きである。まず東京駅出発でなければラウンジは使えない。ラウンジを使おうが使わまいが料金は不変であるから、使わなければ損である。また、ラウンジなどを使うためには急いでいない必要もある。

そういうわけで、「気軽な優等席」としてのグリーン席というものにも一定の需要はあるのだなと納得した。

 

このラウンジは同伴者も3300円払えば利用できることになっている。つまり、このラウンジには3300円の価値があり、ひいては東京駅発着のグランクラス料金の3300円分はこのラウンジの料金であると言っても過言ではない。

 

そんなラウンジは内装も凝っている。一部の机は特注で、柄は六角形。丸の内北口にあるようなドームをイメージしているとのことであった。

 

また、面白いのが机を横から見た形である。筆者も使ったこの机の形は、線路のレールを表している。

 

読み物として新聞などに加え、JR時刻表があるのが東京駅ラウンジのユニークな点だろう。試みに今から乗る列車を探すと、東京駅への入線時刻まで書いてあった。時刻表を手繰るのはいにしえの18きっぱー時代ぶりであり、なかなかノスタルジーを感じてしまった。

時刻表によればはやぶさの入線は23分ということで、もうそろそろ出ようかと思う。静かに過ごせたし、ブログも進んだ。非常に良い旅の滑り出しである。


後編 はやぶさ

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