2022年11月11日金曜日

坂ノ市と臼杵を分かつ山々の名前は何か・その2(山域を示す用語について)

自然地名は曖昧で、だからこそ面白い。

二年前に「坂ノ市と臼杵を分かつ山々の名前は何か」という記事を公開し、web上の記載から「坂ノ市と臼杵を分かつ山々」の名前について、次の4案を示した。

・佐賀関山地

・九六位連山

・九六位山系

・樅木山脈


結論として、全体を「佐賀関山地」と呼び、うち東部の連なっている部分を特に「樅の木山脈」と呼ぶこととした。

しかしながら、まあだいぶ浅い記事であった。そういうわけで、この自然地名問題についてもう少し深掘りしていきたいと思う。

 

初めに考えたいのが、先の4案の語尾に関する問題である。「山地」「連山」「山系」「山脈」と、バラバラである。こういう言葉遣いを大切にしていきたい。

『使い方の分かる 類語例解辞典』から引用する。

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【山脈/山地/山並み/連山】関連語◆山系◆連峰◆山塊

共通する意味★連なっている山々。(英語)a mountain range

使い分け

【1】「山脈」は、大きな山が数多く連なって脈状をなしているもの。「山並み」「連山」は、「山脈」ほど規模の大きくないものにもいう場合が多い。

【2】「山地」は、いくつかの山々からなり、起伏が大きく、傾斜の急な斜面をもった広い地域。「山脈」の方が、「山地」よりも高くてけわしい山々にいう場合が多い。

関連語

◆山系(さんけい) 二つ以上の山脈が平行して走っているものの総称。「ヒマラヤ山系」

◆連峰(れんぽう) 峰々の連なり。「立山連峰」

◆山塊(さんかい) 山脈から離れた一群の山々。(英語)a mountain mass「秩父(ちちぶ)山塊」

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「山並み」は地名とセットで使わないので、少し違う。

「山脈」の方が概して規模や峻険さの著しい山域を指すようだ。しかしながら、その土地に暮らす人にとっては他所との比較は意味をなさない気もする。規模と脈状の地形を尊重するなら「連山」が一番妥当だと思える。

 


改めて地図を見ると、件の山々は佐田岬半島から延びている一本の山脈に思える。地質は共通らしい。

件の山々は、少なくとも「二つ以上の山脈が平行」することを意味する「山系」とは違う。

「山系」について、辞書を引く。

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「山系」(日本大百科全書)

大陸的規模(幅と連続性)で発達している山地群の総称をいう。世界最大の山系は、環太平洋造山帯とアルプス・ヒマラヤ・インドネシア造山帯(地中海・アルプス・ヒマラヤ造山帯)である。これらの山系は、中生代白亜紀以後の新しい地質時代に形成された地形である。古生代に形成された山系として、ヨーロッパのカレドニア、ヘルシニア(バリスカン)両山系、アジアのバイカル、ウラルなどの山系がある。

「山系」(日本国語大辞典)

二つ以上の山脈が近接してほぼ平行に走っているとき、これらを総称していう。

「山系」(デジタル大辞泉)

二つ以上の山脈が近接し、全体で一つの系統をなしているもの。ヒマラヤ山系など。

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『大分百科事典』「佐賀関半島」の項は「樅木山系」としているが、以上からこれは誤りである。

 

おまけ

「山地」(日本大百科全書)

周囲の低平な地形面よりも高い標高にあり、起伏に富む地表部をいう。わが国では、平野から山地に移り変わる地表部を丘陵として区分する場合が多い。諸外国では、丘陵は普通、山地に分類されている。山地の条件として、地質構造が複雑であることをあげる説もある。

 山地分類の指標は、標高、形成営力(成因)、形成時代、侵食輪廻 (りんね) 、起伏量などであるが、その基準は研究者や時代によって異なる。標高1000メートル、10003000メートル、3000メートル以上にある地形を、それぞれ低山性山地(丘陵地)、中山性山地、高山性山地として分類することもあるが、これらの標高区分も研究者によって異なる。火山作用で生じた火山、地殻運動によって生じた曲隆山地・ドーム状山地・褶曲山地 (しゅうきょくさんち) ・断層山地、さらには外的営力(作用)で生じたものとして氷食山地・侵食山地などがある。古生代の造山運動で生じた山地をパレイデンPaläidenまたは古生山地とよび、この山地が侵食され、新期の隆起運動で形成されたものをネオパレイデンNeopaläidenとよぶことがある。また古生代から中生代中期に生じたものを古期山地、中生代末以降に形成されたものを新期山地とよぶこともある。

「山脈」(日本大百科全書)

連続して脈状に一定の方向に連なる山地をいう。世界における大山脈は、台地や高原と異なり、特定の地帯に分布している。環太平洋造山帯やアルプス‐ヒマラヤ造山帯の山脈群はその例である。この両造山帯の分布と大陸の配置関係は、プレートテクトニクス説で説明されている。世界の各地の山脈は、成因、形成の時代、形や位置などを指標にして区分されている。


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