2022年6月2日木曜日

豊予海峡ルートその2(2022年東京シンポジウム)

令和4年5月30日に、大分市主催の豊予海峡シンポが東京で開催され、私も現地で参加させていただきました。話の要点や印象的だったことなどを、書いていきたいと思います。 

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会場は国会議事堂に近い永田町の「ザ・キャピトルホテル東急」大宴会場

・国会議員が多数参加したのは良いことだが、費用673万円は大きい。

 

主催は大分市。大分県、愛媛県、日本青年会議所、豊予海峡ルート推進協議会が後援。

・松山市の不参加が残念。豊予海峡ルートの現状の課題は、愛媛の東予・中予地方での認知度が低いこと。南予地方の20万人に膾炙しても意味が無い。(もちろん必須条件ではある。)地理的・人口的に、松山市での機運情勢が肝心。四国新幹線の機運が高まっている今、それと関連付け、あるいは道後と別府の交流を促すなどあの手この手を使い、松山で豊予海峡ルートの機運を醸成して欲しい。次回に期待。

 

開会挨拶

大分市長 佐藤樹一郎

 

来賓挨拶

衛藤征士郎先生(衆議院議員・大分2区)

・81歳とは思えぬ熱気。

・第二国土軸議員連盟?の会長らしいが、不詳。


衛藤晟一先生(参議院議員・全国比例)


安達澄先生(参議院議員・大分)


長谷川淳二先生(衆議院議員・愛媛4区)

・愛媛4区は南予地方。


山﨑正恭先生(衆議院議員・比例四国)

・選挙演説くらい熱を帯びた演説。

・国交大臣を輩出する公明党の議員として参加、とのこと。

・「衆議院議員465名のうち、四国選出の議員は17名しかいない!」

・割合は3.7%.一方四国の日本全体に占める人口の割合は2.9%であり、むしろ少し優遇されていると言えなくもない。

・ちなみに九州は51名(小選挙区31+比例20)いる。

・一年生議員らしく熱血で好感。

・不登校問題とインフラを関連付けており、面白かった。不登校問題の解決策としてそういった生徒を集めて適切な教育を施す学校を作ることが効果的であり、それは充分なインフラがあって実現するとのこと。特別支援教育などで既に言われていそうな議論ではある。


吉良州司先生(衆議院議員・大分1区)

・急遽参加し、挨拶だけして帰っていった。ゴリゴリ地元なのだから、しっかり参加して欲しかった。衛藤征士郎先生と選挙区入れ替えたら?


さらに、祝電を送ってきた議員も一人いた。

 

来賓紹介ののち、衛藤征士郎先生が発言。日本青年会議所に対して「年度テーマに豊予を入れろ」と陳情。大分市長にもなんか言ってた。

 

基調講演

『レジリエントな国土の創造を目指して』

講師:奥野信宏 名古屋都市センター長(前国土交通省国土審議会会長)

・レジリエントresilientは「弾力性のある」「柔軟な」といった意味で、豊予海峡ルートのキーワードである。が、僕が知らなかったくらいだから、誰も意味が分からないだろう。一般市民向けの講演・文書で使うべき言葉ではない。

・同様に、リダンダンシーredundancy「冗長性」も難しい。「あそび」とでも言えばよかろう。

・国土計画の一貫した基本理念「交流連携が新たな価値を生む」

・「豊予メガリージョン」という言葉は初めて聞いた。人口47万の大分市、50万の松山市に周辺自治体を加え、約100万の全く新たな経済圏ができることが魅力であるということだ。

・「豊予海峡を挟む両地域の古くからの関係」について深く研究すべきだと感じた。そもそも「豊予海峡を挟む両地域」に該当する名前がないのが問題だ。おそらく正確には「豊後水道を挟む両地域」について言っていると思う。「豊予地方」だと厳密には大分県・愛媛県全体を指すように思うが、これまで散々豊予海峡と言ってきたことだし、いっそ「豊予地方」で「豊後水道を挟む両地域」を指すようにゴリ押ししていく方が得策だと思う。

当ブログでは「豊予沿岸地方」という言葉を使っていく。そして、佐賀関・佐田岬半島を特に「海峡地域」と呼称する。


・面白かったのは、電話で喩えた情報通信技術の発達の話。

情報通信技術の進歩は、かえってヒト・モノの移動を促すという逆説があるらしい。

自分でこれを簡単に咀嚼しようと思う。今後テレワークが進み、東京人が大分に移住した場合を考えてみよう。テレワークだから、東京での通勤の移動はなくなる。が、月に一度の本社への出社で、大分-東京間の航空移動が往復一人分増える。妻や子供を連れて行けばもっと増える。また、その人がAmazonで注文すれば、東京では千葉の倉庫からすぐ着いたが、大分では福岡の倉庫から、あるいは千葉の倉庫からといったように、荷物の移動距離が延びる。また、ネットを通じて知り合いになった人と実際に会うことで、新しい移動が生まれる。こういったことを指摘したのではなかろうかと思う。

 

パネルディスカッション

「豊予海峡ルートが持つ意義」


大石久和 全日本建設技術協会会長/元国土交通省技監/第105代土木学会会長

・吠えまくっていた。

・とにかくインフラ整備をしないと国が亡ぶということでした。

 

金山洋一 富山大学都市デザイン学部都市政策支援ユニット長/都市・交通デザイン学科教授

・北陸新幹線との比較を通して、豊予ルートの効果を解説

・「関西の奥座敷」と呼ばれた北陸が、新幹線を通してむしろ関東と交流するようになった。

・移住者増加、出生率上昇、活気の向上

・ルート開通による金沢-東京の時間短縮と大分-大阪の時間短縮はほぼ同一、同様の効果が期待できる。

・大分-松山間の現行4時間から30分台への短縮は「まるでSF

 

矢田部龍一 愛媛大学名誉教授/愛媛大学防災情報研究センター特命教授

・一番吠えていた

・四国での豪雨災害の例から、災害時リダンダンシーの確保としての豊予ルートを推進

・四国と東九州の利用価値の飛躍的な向上。私見だが、豊予海峡ルートにより、四国は本州にとっての「どん詰まりの半島」という立場から脱却できるということか。

・防災教育と絡めて「明治維新の志士」のような若者を作り上げ、20年後の世論を変える

 

橋本均 大分商工会議所/大分経済同友会/株式会社マリーンパレス代表取締役社長

・九州765万人の外国人観光客を、94万人しか外国人観光客の来ていない四国に送り込むことができる。関西に多い欧米系旅客が四国九州に行きやすくなる。

・道後別府湯布院という温泉のゴールデンルート

・豊予が実現する20〜30年後を想定し、新世代交通システムなど先のことも視野に入れた議論を進めるべき。←難しいことを言う

 

高門清彦 伊方町長

・佐田岬半島の付け根に伊方原発が位置する。万が一の事故の際、船やヘリコプターでの避難には限界がある。豊予ルートは「命の道」なのだ。

・但し、30年後にも原発が稼働しているかは分からないという留保付きではある。

・約40kmに亘って豊後水道に突き出した伊方町の大地は神の賜物である。残りの14kmは人間がなんとかしろと神は仰る。豊予ルートは使命なのだ!

・佐田岬半島がなければ、九州-四国ルートは約50kmのトンネルを掘らねばならず、実現がより遠のいていたであろう。また、神は14kmを人間に託したが、もし14kmも神が繋げていたとしたら、豊後水道の海上交通路としての価値は消え去り、豊予沿岸地方は寂れていたことだろう。そういう意味で、40km造って14kmを残した神様はかなりナイスであると言える。

 

佐藤樹一郎 大分市長

・特に何も言っていなかった。

 

最後に、衛藤征士郎先生再び乱入。国の予算に関わってきた立場から、豊予海峡ルートの実現には消費増税が不可欠であると、元も子もないことを言って終了。


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以下は感想。


・今回は「九州・四国全体」「日本全体」という単位での議論が多かった。逆に、「大分県・愛媛県」「大分市・松山市」「佐賀関・伊方町」といったローカルな単位でのメリットについて議論することで、地元での機運醸成につながると思うし、興味もある。地元での認知度9割を目指し、地元国会議員などの選挙の争点になるくらいの状況が欲しい。


・先述したが「豊予沿岸地方」の交流史に興味が湧いた。


・とにかく大分の人に「愛媛・四国に行きたい」、逆も然りと思ってもらうことが重要だ。


・現状では大分市の享受するメリットが強調されており、県全体の議論に繋がっていない。大分市の後背地として県内各地や南九州各県が受けるメリットを算定して議論を喚起すべき。



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