筆者は植民地が大好きで、いつも植民地のことばかり考えている。
ところで、「植民地」という語は曖昧で、「ある地域が植民地である」と明確に言うことは難しい。
そこで、本稿では私的に「植民地」を定義することとした。
見えてきたのは、植民地と呼ぶに欠かせない「定義」と、多くの植民地が共有する「要素」である。
これらを順にみていきたい。
植民地の定義①主権が宗主国に侵奪されていること
植民地の定義②本土になっていないこと(制度的又は実質的に宗主国本土と区別されていること)
植民地の要素①飛地であること
植民地の要素②経済的搾取構造があること
植民地の要素③同化政策がなされること
植民地の要素④本土からの移民があること
植民地の定義①主権が宗主国に侵奪されていること
ある共同体の「主権」を奪うことこそ「植民地化」の必要条件である。
「主権」は大きく三種類に分けることができる。
①国家の統治権
「日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島に限られなければならない。」(ポツダム宣言)
②最高独立性(対外主権)
「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」(日本国憲法前文)
③最高決定権
「主権が国民に存することを宣言し」(日本国憲法前文)
これらの一部または全部を欠如することが、植民地の条件といえる。
例えば、仏領アルジェリアでは植民地市民は参政権を持たず、アルジェリアの在り方はフランス政府が決めていた。典型的な植民地といえる。
また、現在も世界各地に残るヨーロッパ諸国の「海外領土」(グリーンランド、ケイマン諸島、ニューカレドニア等)は、たいてい高度な自治が保障されている。しかし、外交権や防衛権は本国が管理しており、やはりこれらの地域も植民地の定義に部分的に当てはまるといえる。
逆に、例えば長崎の出島は、オランダの影響を強く受けつつも、あくまで幕府の主権が維持されており、よって植民地であるとはいえない。
植民地の定義②本土になっていないこと(制度的又は実質的に宗主国本土と区別されていること)
筆者は、植民地とは「本国の一部として完全に編入されるまでの過渡期にある地域」のことだと考えている。
例えば、現代の日本人で「日本領北海道」という言い方をする人はほとんどおらず、北海道を植民地とみなす人はごく少数派だ。しかし、北海道が日本に併合されていった過程は、典型的な植民地化の流れと完全に重なる。
・先住民の搾取
松前藩による場所請負制を通じ、アイヌの資源や労働力が一方的に収奪された
・先住民の土地収奪と同化政策
北海道旧土人保護法(1899年)により、アイヌの伝統的な土地利用が制限され、農耕への転換と日本語教育が強制された
・本土からの移民導入
屯田兵制度などで大量の和人移住者を送り込み、社会構造を本州型に再編した
これらの点は、国連人権委員会など国際機関も「植民地主義的措置」として指摘している。それにもかかわらず、私たちが北海道を「植民地」と呼ばないのは、制度面でも実質面でも本州以南との区別がほとんどないからだ。
なぜかひとつだけ「道」だし、北海道の人は本州以南のことを「内地」と呼んだりはするけども、植民地的関係はほぼ消え失せ、事実上は完全に同化されている。
同様のプロセスは、東北地方や九州地方、さらには世界中の多くの地域でも繰り返されてきた。同化が成功した地域は「植民地」とは呼ばれず、同化を拒んだ地域だけが「植民地」とみなされる。
したがって、「植民地状態」を定義する際には、「同化の有無」という視点を欠かすことはできない。
以上の2点が植民地の定義である。
次回は、4要素を取り上げる。記事自体はすでに書き終えているが、校正や画像挿入が面倒くさいし、何より長いと読者が飽きるので、次回にする。
冬コミで「植民地事情2025 植民地通貨の歴史」(仮題)という同人誌を頒布します。
なぜ植民地に独自の通貨が発行されたのか、その現状はどのようであるか、ということを熱く書きました。
よろしくお願いします。
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