ゴッホの『ひまわり』(アルルのひまわり)は世界に6枚現存し、そのうち1枚が日本にあります。
アジアで唯一、東京のSOMPO美術館に所蔵されています。
筆者は、ロンドンのナショナルギャラリーですっかり『ひまわり』に魅了され、「残り5枚」を死ぬまでになんとしても拝もうと決意しました。
そこで、早速「2枚目」を観に行く運びとなりました。
芸術の光が届かない田舎で育ったので、美術館というものは必ず常設展と特別展のふたつがあるものだと思っていました。
しかし、都会の私立美術館は特別展のみのところも多いようです。
SOMPO美術館も原則的には特別展のみであり、唯一『ひまわり』だけが恒久展示されています。
『ひまわり』を観るには特別展を観る必要があるので、今回、開催中の『カナレットとヴェネツィアの輝き』も観ました。
たぶん『ひまわり』がなければカナレットを知ることはなかったと思うので、いい機会になったと思います。
カナレットは、ヴェネツィアの尖塔建築を写実的に描いています。
「尖塔」「カナレット」というキーワードから、てっきりイスラーム建築の塔「ミナレット」がテーマの展覧会かと誤解したまま入場したので、動揺しました。
カナレットは人名です。
カナレットが生きた18世紀はヴェネツィア共和国はもはや衰退しており、かつて有していた海外領土もすべて喪失していました。
しかし、平和がありました。
観光地として栄えたため、今日我々が旅先で絵葉書を買うような感覚で写実絵画が買われました。
それが、ヴェネツィアの美術史上の「輝き」となった、ということかなと思います。知らんけど。
印象的だったのはウィリアム・ジェイムズ・ミュラーという人の絵です。
リフレクションがすごい!
それ以上の感想はないのですが、「海と結婚する」儀式を行うほどの大海洋国家を描く絵ですから、海の美しさに目がいきます。
あとは、こんなに写実的な絵に囲まれながら、モネの絵が平然と飾ってあり、面白かったです。
面白かっただけで、特に魅力は感じませんでしたが。ちょっと毒々しい色で苦手です。全部を混ぜたドリンクバーみたい。
さて、『ひまわり』です。
特別展の出口に、専用の部屋が用意されています。
ロンドンよりかなり人が少なく、ゆっくり楽しむことができました。こっちは有料だし、リピーターも多いからでしょうか。
この『ひまわり』は、1987年に安田火災海上保険(当時)が約58億円で落札したものです。
日本のバブル景気・元気だった時代の象徴という感じがします。
建物のところどころに「ひまわりを観ていってくれ」という旨の案内があり、その感じがギリ押しつけがましくないラインで、好ましいです。
筆者が所有者だったら、もっと押し付けているだろうなぁと妄想します。
この『ひまわり』は、歴史的に7枚あるうち5枚目に描かれたものです。
ロンドンで観たのは4枚目で、この5枚目は4枚目を参考に描かれています。
ですから、花弁の位置などもほぼ同じです。
初めて見たとき、あれ?ロンドンと同じ?と一瞬思いました。
しかし、明確に異なる点があります。それは、花の中央に赤い丸があるところです。
むろん、本物の花にこのような赤丸はありません。
「ゴッホが色彩を実験して描いたのだ」という説明がされがちです。
が、個人的には、ないほうがいいかな~……
似つかわしくないし、邪魔だと思います。
まあ、初見のインパクトが大きかったので気にかかっていただけで、すぐに観慣れましたが、まだ「ないほうがいいなぁ」と思っています。
いつか「この赤がいいんだよ!」と思える日が来ると嬉しいです。
ともかく、人が少ないです。
さらに、特筆すべき素晴らしい点として、絵の目の前に長いベンチが用意されているのです。
どっしりと座って、ボケ~~っと一人で『ひまわり』を眺める。
たまに近くまで歩いて観て、また戻って座って観る。
これを超える幸福がどこにあるのだろうかと思いました。
心から幸せでした。
僕、58億円払ってないけどいいのかな?と思いました。
離れがたかったです。
リピーターの人には、ず~っと『ひまわり』を必死に見つめている筆者は初々しく思えたかもしれませんが、まぁ好きなんだから仕方ないですね。
ちなみに、写真撮影は可ですが、自撮りなどの「記念写真」は不可とのことでした。ナショナルギャラリーで恥をかき捨てて撮っておいてよかったと思いました。
ミュージアムショップで『ひまわり』のA4クリアファイルを買いました。
美術に疎い筆者でも、『ひまわり』がゴーギャンの寝室用に描かれたものだということくらいは知っています。
早速、額装して寝室に飾り、ゴーギャン気分で暮らしています。
ふだん、数万円するコインを後生大事に飾って得ている効用と同等の幸福が440円のクリアファイルから摂取できてしまい、複雑な思いです。
次の日は、国立西洋美術館のモネ展に行きました。
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