『深夜特急』の沢木耕太郎は、その旅から10年後に、当時の手紙を読み返しながら大作を著したそうです。あえて時間を置くことで、旅で見たもの・感じたことが心に沈潜する、というようなことが書いてありました。
『秘境の旅人』のプー太郎にはそのような芸当は無理ですので、帰国初日から執筆することとしました。いや、高校時代に深夜特急スタイルの真似はしてみたんですけど、普通に旅のことを忘れてしまいました。ヌルい旅をしているな、と自省する日々です。
最近めでたいことに結婚しまして、また、最近かなしいことに退職しまして、丁度良いので、次の仕事までの空白期間に新婚旅行を敢行することにしました。
妻に尋ねたところ、ブログのネタにしてよいと、苦虫を噛み潰したような顔で言っていましたので、心置きなく書いていこうと思います。
全体を読めば旅を楽しみ消耗していく様子が分かり、一部を読めばその観光地のことが分かる、ということを目標に書いていきます。
準備
7月7日に資格試験を受験し、一切答え合わせをすることなく、現実を忘れて旅に出ることとしました。受験勉強は辛かったですが、その後にヨーロッパ新婚旅行が待ち受けているので頑張れた、という感じでした。来年からはどういうモチベーションで受験しようかと不安になります。
15日が出発の日だったので、1週間の準備期間がありました。結構暇でした。まあぼちぼち、旅の時間を一分一秒無駄にしないように様々な準備を施しました。例えば、スマホの不要な通知を切ったり、家賃やクレカの支払いに備えて口座のお金を移動させたりです。尤も、読み進めれば分かるように、旅先で一分一秒を浪費しまくることになります。
ほかに、冷蔵庫の中身を減らしたり、冷蔵庫を節電モードにしたり、ゴミ出しをしっかり済ませたり、トイレの便座温め機能を切ったりしました。旅程は8月5日までの21日間に及ぶので、完璧にしておきたかったのです。
なぜ三週間も旅に出るかといえば、無職で暇だからというのもあるのですが、ヨーロッパまでの往復交通費が馬鹿にならないので1回でしゃぶり尽くしておきたいという点で夫婦の心が完全一致したからです。まあ新婚旅行だし!?ということです。
読み進めれば分かるように、10日目くらいで飽きて帰りたくなりました。
出発当日。5時くらいに起きて、前日にダイレックスで買っておいた惣菜を食べ、厳重に火の元の電源を消して回りました。どうしても何か忘れているという感覚は拭えないものの、7時頃出発。あれだけ事前に示し合わせておいたのに、玄関の鍵を閉めたことを明確に確認することを、二人とも失念していました。まあ幸い結果的に忘れ物もなく、鍵も閉まっていました。これはどうにもならんですね。
最寄りのバス停までスーツケースを転がします。預入手荷物運賃を節約するため、そしてなるべく身軽であるために、二人でスーツケースひとつで旅に出ました。トランクひとつだけで浪漫飛行へ、ということです。転がしながら、意外と転がすの大変だな!と感じました。一つにして良かったと思います。
祝日なのでバスは空いており、すぐに大分駅に着きました。大分駅から空港バスに乗り込みます。スマホ事前購入で100円引き。それでも1人1500円します。なぜなら、大分空港は天竺よりも遠いからです。直行高速バスで1時間強かかります。成田国際空港でも許されない遠さです。例えば、某交通系youtuberは大分に来るときに福岡空港を使うそうです。これは極端ながら、まあそのくらい遠いです。結局、すべては広大な別府湾を回り込まなければならないのが悪いので、県は湾を縦断するホバークラフトを推進していますが、事故多発で難儀そうです。
大分空港にて
ともかく、大分空港に着いたのが8時半くらいでした。10時半の飛行機なので、まずまず常識的な時間でしょう。さて、筆者はワンワールドアライアンスメンバー・日本航空のステータス修行を敢行した暗い過去があるため、当然、ロンドンまではJALを利用します。JALの機械でチェックインを済ませようとすると、なぜかエラーが出ました。二人でオロオロとスタッフに尋ねると、国際線特典航空券の経路だから窓口で手続きせよ、ということでした。
そう、今回は往復ともにJALのマイルを使った特典航空券なのです。先述の修行で自動的に貯まったマイルや日頃のクレカ利用、陸マイラー的ポイ活、楽天ポイントのマイルへの交換など総動員でかき集めたマイルは二人で約12万。これをロンドン便で7万マイル、帰りのヘルシンキ→羽田で4万7000マイルで利用しました。
例えば、行きのロンドン便はプレミアムエコノミーで予約しましたが、これを普通に予約すると二人で約95万円でした。これをマイルでとると、7万マイル。燃油サーチャージは自腹ですが、それでも1マイルが約12円の価値を帯びることになりました。わざわざ「普通に予約した場合の運賃」を調べる僕の浅ましさを除けば、特典航空券、素晴らしいでしょう?
この話には続きがあります。お願いなのでもう少し喋らせてください。JALの国際線特典航空券は、国内移動分が完全無料で付いてきます。つまり、今回は大分→羽田→ロンドン・ヒースローと2回乗るわけですが、この大分→羽田部分は完全にオマケで付いてきます。僕はこの説明で、年会費が掛かるクレカを渋る妻を説き伏せました。マジ最高です。
そういうわけで、オマケ航空券なので、機械では対応していないということでしょう。全く結構なことです。タダですからね。快く窓口に並びました。
窓口でロンドン行き・ヘルシンキ帰りの異常経路を見せたからか、スタッフの方が「新婚旅行ですか?」と声をかけてくれました。僕は前日にGUで買って不必要にずっと着けているサングラスを外し、「浮かれていてすみません」と謝罪から入り、和やかな会話を楽しみました。
スーツケースを預け、空港のカードラウンジに入って休みました。カードラウンジとは、クレカのゴールドカードを持っていれば誰でも入れるちゃちいラウンジのことです。僕の異常性を強いて挙げるならば、最寄りの大分空港にJALのサクララウンジが無いにもかかわらず、JALのステータス修行を敢行した点、これに尽きるでしょう。修行の意味が半分くらいないですね。
そういうわけで、上級会員であることを全く活かせずに佇んでいると、誰かに声を掛けられました。振り返ると、先程の窓口のお姉さんがおり、出発前に良かったらとお手紙を頂きました。新婚旅行を祝福するメッセージに妻と大喜びしましたが、それにしても、ラウンジまで探しに来るとは、JAL恐るべし!一生付いていきます!と忠誠心を固くしました。
サクララウンジはないものの、上級会員は上級会員ですから、飛行機には優先搭乗できます。ほら、空港で先に「なんちゃらクラブのお客様をご案内していま~す」とか言って、したり顔のジジイが飛行機に吸い込まれていくじゃないですか。アレですよ。僕、なんちゃらクラブに入ってます。ですから、得意げに妻と優先搭乗しました。ところが、機内で妻が「優先搭乗は恥ずかしいから普通に入りたい」と言っていました。僕とは全く感性が違う妻の言葉に、この人と結婚してよかったなあと思いました。僕は、全然したり顔で優先搭乗したいです。
そんな妻も、国内線ではWi-Fiが無料なのに国際線では有料であることに関しては激怒していました。ともかく、そういう風に羽田に着きました。この日は天気が悪く、線状降水帯が発生するかもと言われていたので、無事に飛んでつくづくホッとしました。
国際線は深夜だったので、スーツケースは預けたまま、東京の友人と昼飯・カラオケ・呑みに行きました。資格試験勉強のため、節約のため、酒に弱いため、友達が少ないため、無職のため、飲み会は半年ぶりでした。久々に呑むビールはたまらなかったな~
羽田・国際線サクララウンジ
20時半頃に羽田に戻りました。今度は国際線なので第三ターミナルです。先述の修行の際には無限に羽田ー山形を往復していたので第一ターミナルには足繫く通ったのですが、第三ターミナルは久しぶりです。コロナ前ぶりかな?いや、厳密には、その山形修行の際に、家に帰る交通費を節約するために第三ターミナルで野宿したことがあります。24時間開いてますから。まあ、寝坊して朝の飛行機に乗り損ねたので、ただ身体を痛めただけで家に帰ったんですけどね。
ともかく、上級会員としては初めての第三ターミナルです。深夜1時の飛行機なのに21時前に来る理由は、お分かりでしょう、国際線サクララウンジです。あったりまえですが、国際線のラウンジの方が国内線に比して著しく豪華です。国内線はドリンクだけですが、国際線はメシがあります。タダです。
まずは名物のビーフカレー。これを食うために修行したと言っても良いくらいなので感動しました。修行費用30万円のカレー、非常においしかったです。肉は大きいし、全体に牛肉が溶け込んでいるのでどこを食べてもおいしいです。全てのカレーは過去になりました。
普通にうどんもおいしかったです。こういううどん好きなんですよね~
お酒も色々ありました。僕はアルコール弱いのでお酒分からないんですよね~悔しい話
アルコール弱い勢向けに、ノンアルのスパークリングワインがあったので、少々嗜みました。鼻に抜ける香りがよい、と妻は語ってました。何を知ってんだよ、と僕は思いました。
また、写真はないですが、ノンアルのビールが缶で冷蔵庫にストックされていました。缶で提供されるのが一番生々しく無料を実感できるので、試しに飲んでみました。飲めたもんじゃありませんでした。
妻が撮った和食風の諸々。妻には好評価でしたよ。
ネットにはラウンジ専用アプリで食事を注文するとありましたが、2024年7月現在はセルフビュッフェ方式でした。量が調整できるのでセルフの方がよいですね。
アプリは、シャワーの予約に使いました。混んでいるかと思いましたが、すぐに順番が来ました。受付でシャワーのカードキーをもらい、ついでに歯ブラシセットももらい、サッパリしました。
ネットでは「一流エアラインのシャワーとは思えない」と酷評されていましたが、別に普通でした。上にシャワーがあり雨みたいになる海外風ですが、手に持つシャワーも付いてますし、水圧も強かったです。
カスなのは歯ブラシでしたね。さぞしっかりしたものだろう、家で使いまわしたろうかなと思っていたのですが、蓋を開ければ使い切りの紙製のSDGsでした。全く、一流エアラインの歯ブラシとは思えませんね。
外貨両替のハナシ
時間が前後しますが、出国審査の前に外貨両替をしました。後世に読む方が「こんな円安で両替して馬鹿みてえ」と感じることを祈っていますが、レートは1ポンド=220.54円でした。この日の相場は205円くらいでしたから、大体15円、7%くらい手数料が乗ってます。これには僕も狼狽えましたね。この両替所は日本空港ビルデングというところですが、羽田最安と噂の両替所だったからです。最安でこれか、と思いました。
まあ現地で現金を使う機会は無さそうだし、実際イギリスでは一切使いませんでしたが、まあお守り代わりということで1万円分くらい替えました。
ちなみに、ユーロはレートが179.53円で、相場は172円くらいでしたから、手数料は4%くらいでした。クレカで払っても海外事務手数料+為替手数料で少しは取られますから、これくらいの両替手数料は許容範囲かと思います。
それよりも重要なことは、まあ僕がムチムチの無知だったのですが、外貨両替すると、海外のコインは出ないのに日本円のコインは出てきてダルいということです。
つまり、結局海外でコインを使う場面はありませんでしたが、例えばトイレなどを利用するのに海外のコインが必要かなと思っていたので、これがダルかったです。また、端数の日本円が返却されるのも、荷物が重くなり困りました。まあ後者については、空港には募金箱がありますから募金すればいいんですけど、当方ケチなので……。そういうわけで、事前に銀行等で両替していくのがベストかなと思います。
さて、サクララウンジを出たのですが、その足で上階のサクララウンジ・スカイビューにも寄ってみました。実は、今回乗るロンドン行きの深夜便は機内食が少ない代わりに、このスカイビューラウンジが誰でも使えるのです。「カレー食っとけ」ということですね。だから、さぞ賑わっているだろうと思ったのですが、人はそこまでいませんでした。そして出発のゲートに行くと、いっぱい人が並んでいました。時間が遅かったからかな?それともみんなラウンジに興味ないのかな?ラウンジのためにわざわざ修行した僕ってなんなのかな?と思いました。
もう一つ本当のことを言えば、今回我々はプレミアムエコノミーで予約したのですが、プレエコだと上級会員じゃなくてもラウンジ使えるんですよね。もう本当に修行の意味がないです。今のところ、優先搭乗・したり顔だけ。はーーーーー
次回、出国。機内で窒息し、入国審査引っ掛かって、大英博物館に入れず泣く、という話をします。
当ブログはディアゴスティーニ方式なので、次回からは文章は短くなる予定です。お楽しみに。
3日目 4枚目のひまわり
サクララウンジに飽きたらキャセイラウンジおすすめやで。JGCの特権。ワイはこのために修行した
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