一定の収入以下の学生は、学生である間、国民年金の保険料納付が猶予されます。その額は大体40万円です。
これはあくまで「猶予」なので、その後「追納」するかどうか、判断を要するわけです。
大前提:追納は義務ではない。
追納は義務ではありません。追納しなければ、その分ジジババになった時の年金支給額が減るだけです。
実際、日本年金機構のサイトには「将来受け取る年金額を増額するためにも、追納することをお勧めします。」と、控えめな表現がされています。
追納すべきか?自分で増やすべきか?
結論から書きます。
結論
・長期投資ができるなら投資せよ。
長期投資の方が「勝つ」蓋然性が高く、メリットも多いからです。
「長期投資ができる」とは、一定の余裕資金が別にあり、かつ、暴落時に売ってしまわないメンタルを持つことを意味します。
・追納するならなるべく早くせよ。
3年以上経つと、加算されるからです。
また、そもそも、10年以上経つと、追納できません。
以下、「追納」か「長期投資」の二者択一で考えます。浪費癖のある方は帰ってください。
それぞれ、何が起きるか書いていきます。
・40万円を追納する
→社会保険料控除で約8万円(高所得者はもっと)返ってくる
→年金受給が開始すると
(追納した月数)/480×(その年の老齢基礎年金額満額)
がもらえる。
(追納していない場合は貰えないのは当たり前)
・40万円を長期投資する
→平均年利数%で増えていく
これをグラフにしたものが、以下になります。
2000年生まれの人が、2023年に40万円を追納なり投資なりした、という内容です。
追納(受給額固定):追納によって増加する受給額が今と変わらずずっと4万円であるとしたグラフです。2024年に社会保険料控除で8万円が返ってきて、2065年の年金受給開始から、追納分が毎年4万円ずつ返ってきます。
追納(受給額単利1%増加):追納によって増加する受給額が、2023年の4万円から毎年1%ずつ(400円ずつ)増えていくという希望的観測をした場合の受給額です。例えば、2065年の追納分年金受給額は57200円、2066年の追納分年金受給額は57600円です。
年利n%複利運用:文字通りです。
このグラフを見ると、まあまず投資した方が「勝てる」ことが分かります。
一応、2087年に「追納(受給額単利1%増加)」が「年利2%複利運用」を上回りますが、はたして年金が毎年1%増える経済環境で、投資年利が2%しかないことがありえるでしょうか?
年金がそんなに景気がいいなら、投資年利ももっと良いでしょう、多分。
投資のメリット
・平均年利2%程度が出せれば得をする。
(参考:全世界株式の過去30年平均利回りは7%)
・早死にして「払い損」がない。
・追納した場合と比べて、証券口座に32万円+利息が余分にあるので、必要な時(事故、住宅ローンの頭金)に例外的に使うことができる。年金は引き出せない。
・年金制度の改悪を回避できる。
・猶予期間は追納しなくとも納付済期間とみなされるので、障害を負っても障害基礎年金はもらえる。
(追記:納付済期間とはみなされませんが、実質的に納付済期間と同じ扱いを受けます。障害基礎年金の保険料納付済期間と同様の扱いを受けますし、猶予期間は老齢基礎年金の受給資格期間にカウントされます。)
投資のデメリット
・長期投資が前提であること
浪費癖がある人・暴落に耐えられない人は、おとなしく追納した方が、老後のために良い。
・元本割れのリスクが、一応、なくはない。
・長生きするほど、年金額が追い上げてくるのが、嫌な感じがする。
追納のメリット
・放っておいても、納めた40万円が80歳くらいで80万円になる。
・毎月の年金額が増えて嬉しい。
追納のデメリット
・年金制度はほぼ確実に改悪されるので、そのリスクを負う。
言わずもがな。
・3年以上後から追納すると、若干加算される。
保険料の免除もしくは納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされますので、お早めの追納をお勧めします。
(「国民年金保険料の追納制度」)
・追納手続が面倒臭い。
年金事務所で手続きして追納した後、社会保険料控除を確定申告(年末調整)する。
2023/11/24追記