朝6時半に空港が開くということで、そこから逆算して6時前に快活を出た。快活には16時間ほど滞在し、学割が効いて2700円。安すぎてホテルに泊まるのが馬鹿らしくなるからやめて欲しいが、まあ非常に助かる。
東の空が若干明るんできた。黙々と雪道を2キロ歩く。何がつらいって、この道を一週間であと5往復ほどしないといけないことだ。今歩くのはそれほどつらくないけれど、というね。
雪道はゆっくり歩くことに「滑らない確率が上がる」というメリットがある。いい感じに減速して、ちょうど6時半頃に空港に着いた。しかし、はたしてJALのカウンターが開くのは6時50分だった。20分間、ただ朝の空港にいる人になった。
50分になると、待ってましたと言わんばかりに係員に襲いかかり、今日乗る6区間全ての座席を確保することができた。この時点で『残席4』『残席1』の区間があったが、構わず取ってくれた。世の中、払う運賃の額よりも「早い者勝ち」の論理が優先されることが多い。
発券には案外時間がかかる(同区間を買う場合には会計を分ける必要があるらしい。これはネットで先得を買っても同様。)ので、会計を終えたら7時ちょうど。飛行機は45分発だから、そろそろ保安検査を通過しておいた方が良い。5時半に起きたのに、割と時間に追われていることに驚くとともに、暇をしないで済むから有難くもある。
この日この後さらに2度通過することになる丘珠の保安検査場を抜ける。時間に追われるといえば、保安検査場を抜けるのもまた時間がかかるのだ。上着とリュックは当然として、パソコンやスマホは別のケースにまとめることが推奨されるようで、さらにスノーブーツを脱がないといけない。4ケースも用意して通過させるのだから、時間がかかる。
だから、見た目より時間がすぐに過ぎ、暇を持て余すことなく釧路行きに搭乗した。この文章はこの日の夜に書いているのだが、6フライトを終えた後に1フライト目のことなど思い出せるわけがない。電子書籍で買った小説を読み終えた、くらいか。
釧路に着き、すぐに折り返す。久々に窓側席に座ったので、地上の雪景色をよく観察できた。シートベルト着用サインが消えると、CAさんが「対地速度500キロメートル、高さ5000mを飛行中」とアナウンスしていた。「対地速度」とは不思議な概念だと思う。確かに、我々が知りたいのは「対地速度」であって「対気速度」ではない。
あと、朝ごはんが昨日のザンギ巻きの余りだけだったので、早く昼ごはんを食べたいという一心であった。
そういうわけで、丘珠に着いたら昼ごはん。件のレストランで900円の「丘珠ラーメン」を頼む。あと100円追加すればスタンプがもう一つ貰える、という葛藤に苛まれたが我慢。どうせあと4回くらい、来るだろう。
丘珠は玉ねぎが有名であることは先述した。だから丘珠ラーメンには当然ながら玉ねぎが入っている。ラーメンに玉ねぎ?美味いの?
いくら丘珠の玉ねぎとはいえ、美味くはなかった、とだけ書いておく。
次のフライトは奥尻往復。片道6600円。5100円だと思い込んでいたので、朝にカウンターでしばし閉口してしまった。往復で3000円も高い。
しかしながら、もしこれに乗らねば無為な時間的空白が著しく、さらに結局ここで乗らない分はいつか余計に山形往復に乗らねばならない。その際にかかる航空券代以外のコスト(電車賃など)や時間などに鑑み、乗ることにした。
「だったら昨日の利尻往復も乗るべきではないか」との謗りは免れないが、6600円と7600円では話が違うし、何より昨日は利尻便に乗らなければネカフェに帰ることが出来たが、今日は午後の釧路往復が控えるために帰れない。
ケチケチグダグダ色々書いたが、とどのつまりこのように思考を巡らすくらいしかやることが無い、ということである。
というわけで、奥尻に行く。もちろん、行って帰るだけである。上で色々書いたが、行くことで「行った」と言えるようになるし、まあ無限に釧路・函館に通うよりは行き先にバラエティがあった方が幾分面白い。自分の中の保守性の問題である。
乗る飛行機もなかなかカッコ良い塗装だった。筆者が今北海道で何をやっているかというと、簡単にこのone worldのサファイア称号を獲得しようとしているわけだ。
筆者自身がone worldに加盟すれば話が速いのではないか、と支離滅裂な思考を巡らせる。
奥尻島は札幌の南西方向、渡島半島の西にある。そこそこ大きい。1993年に大津波が襲ったことで知られる、らしい。2000年生まれの筆者には大津波=東日本大震災で強烈にインプットされているから、知ってはいても印象にはなかった。
が、そんなことは関係ない。行って、到着ロビーから出発ロビーに直行するという想定にない移動をし、帰るだけ。修行とはそういうもの。奥尻、興味ない。こんなテンションで3レグ目をこなしたが、案外奥尻空港は面白い場所だった。
まず、奥尻空港の今日の出発飛行機は次に乗る一便だけである。この一便のために、三人の保安検査員がJALの制服を着て準備しており、警察官もいる。1日1本、いわば「秘境空港」なのだが、これが一定数利用され、職員もいるのが面白い。
そもそも、到着ゲートと出発ゲートが同じ1階にある空港も初めて見た。簡易的な構造が、駅の「停車場」とか「簡易郵便局」のような感じを醸し出してとてもよい。
到着と出発が同じ階にあるため、筆者が到着ゲートから現れて再度出発する姿はバッチリ係員に観察されてしまったが、特に何も言われなかった。僕も最早いちいち恥ずかしがらない。お互い、慣れたものだ、と思う。
搭乗待合で「大阪湾のクジラが死んだ」旨のほのぼのニュースを眺めていると、保安検査場の警察官が島民らしき乗客と歓談し始めた。信じられない、保安検査場の警察官ってもっと無慈悲で冷酷なはず!面白すぎる!
一人で盛り上がったのち、丘珠に帰る。ちなみに丘珠便は週2日だけで、他の5日は函館便になる。もともとは全て函館便であった。地図に明らかなように、奥尻は函館経済圏なのだ。
それなりに乗客はいるが、しかし48席を埋めるほどはいない。往路も同様の案内をされたが、復路でも、2席とも空いている席に移ることをCAさんに提案された。ありがたい提案だ。そして、往復でCAさんは同じ人なわけだから、流石にバレる。こいつ、やってんな、と。
「今日はマイル修行ですか?何レグ目ですか?」
なんて優しい声かけなんだろう。「お前はスカイメイト乞食ですか?」と言われるくらいが丁度よいと思うのだが、それだけに留まらず、シールとポストカードも貰ってしまった。ホスピタリティで追加料金とってもらっても良い、と思う。あと「レグ」って本職の人が使う言葉なんだ、と知った。キモ=オタク方言かと。
丘珠空港に着陸。空港前のセコマですごい海苔巻きを買い、腹の足しにして5レグ目。昨日は5・6レグ目が欠航のためにこなせなかったが、今日は無事に6レグできそうだ。
5レグ目・釧路行きの飛行機の思い出は、搭乗口でいきなりCAさんに声をかけられたこと。
「昨日も乗ってましたよね!」
いや〜、流石に恥ずかしいよ。往復便に乗って復路で「おかえりなさいませ」と言われるのは経験したけど、往路で言われるのはちょっと次元が違う。そのCAさんの苗字はやや珍しく、こちらも印象に残っていた。「よろしくお願いします」以外に言えることがない。いや、憶えてもらっていて嬉しいんだけどもさ。
今後も基本的にこの生活が続くわけで、先が思いやられる。HACは小さい会社だし、全員顔見知りになるんじゃないか、と危惧。
釧路につき、爆速で折り返す。当然ながら「おかえりなさいませ」とCAさん。
今回は、生まれて初めて非常口座席に座ることになった。さすがは『残席1』である。直近にジェットスターが緊急着陸する事件があったばかりなので、気を引き締めて案内を読んだ。安く乗ってるんだから、これくらいはしないとね。
席も独特で、在来線のボックスシートのように対面で4人座る。前を向いたら前の人と目が合うので、手元をいじるしかない。予め本を買っておいて助かったと思う。
この日はそこそこ風が強く機体も揺れたが、筆者が一昨日に購入した航空安全御守りの御加護で墜落せずに済んだ。一安心し、CAさんに挨拶して帰ろうとすると、出口でCAさんがお手紙(無論、コピーではある)を渡してくれた。うお〜、嬉しい。丁重にお礼をして、さああとは帰るだけだなあと思い、快活クラブに向けて歩きながら冷静に考えると、これって事象を文字起こしすると、女の子が僕の帰りを待ち伏せして手紙を渡してくれた……ってコト!?!?「うお〜、嬉しい。」程度の話ではなくね?
冗談だけど、とにかくいい思い出になった。流石にもう一度会うと3回目(3往復目)は気まずいので、思い出のままにしてほしい。
丸亀製麺に寄った後、シャワーを浴びるべく快活の近くの個室ビデオに行った。店内に初めて入ったが、そこは、凄い空間だった……。「25分」の時間制限付き(延長料550円)でシャワーとドライヤーと歯磨きをこなした。いや〜、時間制限はだめだ。シャワーという至高の思考の時間が台無しになる。今後は、シャワー付きの快活に泊まることとする。
おまけ
丘珠空港の上空から撮った写真。飛行機があの大きさに見えるということは、向こうからこちらもあの大きさに見えているということで面白い、ということを伝えたいのだが、写真を撮っちゃうと倍率が変わるから意味なし、ボツ。
0 件のコメント:
コメントを投稿