2014年12月19日金曜日

闇夜の駅に、見慣れぬ訪問者【マヤ検】

・闇夜の駅に、見慣れぬ訪問者

 軌道計測用の車両、その名もマヤ。 それが日豊本線を走るというので、撮影をしにいった。時刻は23時台。夜の寒さに震えながら待機していると、ホームに響く警報音。ゆっくりと、闇夜の坂ノ市駅に迫ってくるマヤ検の姿とは…。



 そもそも、マヤ検とは何だろうか。
マヤ検とは、国鉄が製造した軌道計測用の事業用客車のことである。正しくは、『国鉄マヤ34形客車』と言い、当時増備が進められていた10系客車をベースにしている。要は『はたらくくるま』だ。
製造された10両のうち現役なのはJR北海道の1両、そしてJR九州の1両、合わせて2両のみとなっている。
JR九州のマヤ検は車両番号2009で、1978年に製造された。製造から35年が過ぎたことになる。どうでもいいが、『マヤ』という名前が、女の子の名前みたいで親しみやすい。


僕はまだこの車両を実際に見たことは無かった為、真夜中ではあったが行こうと決断した。
なにより、国鉄に触れたい、という想いがかなり強かった。真夜中の駅前通りを歩いて駅に到着。誰も居なかったが一応入場券を購入し、駅構内へ。
実は、駅に照明が点いてないんじゃなかろうか、と心配していたのだが無駄な心配に終わったようだ。人っ子一人いないホームに、暖かい電燈が灯されていた。
 駅に来る前に暖をとるために買った温かい珈琲は既に冷え切っており、階段を上下することで体を温めるほか無かった。
そして寒さを凌げる待合室の存在に気付いた頃、ホームに鳴り響く警報音。列車到着の合図である。しかし、なかなか姿を表さない。十数秒後、カーブを曲がってきた機関車の鋭い光がようやく僕の視界に入ってきた。多分、軌道を計測しながら走るために速度が遅くなってるんだと思う。そうして段々近づいてくる機関車とマヤ。
ようやく駅に入ってきて、さぁ停車しろ、撮影タイムのお時間だヒャッハーと思っていると…
 なんと目の前を通りすぎてしまう。どうやら、停車する時はマヤ検は少し普通列車の停車位置より奥の方に停車するらしいのだが、そんなことなど知る由もない僕は慌てふためき、小走りで車両を追いかけた。すぐに停車し、ほっと胸をなでおろしていると、青い車体が目に飛び込んできた。マヤだ。ようやく会えた、という感じである。
青い車両赤い反射板。国鉄の香りを残す車体。どれも、感動モノである。
少し前までは「凍ったんじゃなかろうか。凍傷か。切断か。」と思っていた手の指も軽快にシャッター音を鳴らす。寒さなど、この時の僕の熱気にはかなわなかったようだ。
 限られた停車時間であるので、マヤを存分に撮った後は前の機関車にも注目してみた。黒い。機関車についてはあまり知らないが、元はオレンジだったという。その色が良いな、と抽象的に思っていたが、実際に目の当たりにしてみると黒は黒で夜に溶け込んで乙なものである、と思った。
次回は是非昼間に撮りたいものだ。
僕が機関車を撮っていると、再び警報音。行き違いの列車が到着したらしい。その直後、機関車のエンジン音が響く。僕は急いでマヤの後方に周った。
そして、闇夜の坂ノ市駅にやってきた見慣れぬ訪問者を無事に撮影することが出来た。マヤは坂ノ市駅に別れを告げ、再び計測の任務に戻る。ゆっくりとした速さで走り去っていくマヤ。
さようなら、また会う日まで。末永く活躍してほしいものだ。

END

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